第211回 会計の世界史―イタリア、イギリス、アメリカ500年の歴史―/田中 靖浩

今回紹介する本は、田中靖浩著「会計の世界史―イタリア、イギリス、アメリカ500年の歴史―」です。
本書は、細かい用語や計算、手続きの解説からは一歩引いた立場で「ルールや仕組みが存在する意味」に焦点を当て、その歴史的背景とともに会計の変遷を「物語」として読める一冊になっています。
専門的な知識がなくても読み進められる内容(学習経験があるとより楽しめるが、登場する用語には脚注が用意されています)となっており、誰でも楽しく学べる一冊だと思います。

また、本書はマンガ版も出版されているほか、筆者の田中さんが自身のYouTubeチャンネルにて本書の解説動画を投稿されており、好みのスタイルで楽しむことができます。

本書は三部構成で、第一部はイタリアからオランダ、第二部はイギリスからアメリカ、第三部はアメリカを舞台として物語は進みます。レオナルド・ダ・ヴィンチやジョン・F・ケネディ(の父)、蒸気機関車の父ジョージ・スティーブンソン、その他多数の偉人達が主人公として登場し、当時の空気感を味わいながら、会計の部分もスムーズに理解できるように書かれています。
例えば、減価償却誕生の節では次のように書かれています。
16世紀、木材不足だったイギリスでは次なる燃料、石炭に注目が集まっていた。石炭を掘る際にとめどなく湧き出る地下水の排出に人手が割かれ、非効率だった。ジェームズ・ワットが排水ポンプ用に蒸気機関を発明し、石炭の大量採掘が可能に。産業革命が始まる。
➡蒸気機関は据え付け型の動力装置として、織物や製鉄の工場に導入される。排水ポンプの機関士の父のもと、エンジンを身近に育ったジョージ・スティーブンソンは、エンジンをタイヤに乗せた自走式の乗り物(蒸気機関車)を発明する。
➡鉄道会社は多額の固定資産が必要だが、棚卸資産を持たず、運賃収入しかない上に、期待通りの収益を上げられるかも怪しい。政府は借入に頼らせるのは危険と判断し、鉄道会社に厳しい借入限度額を設定する。
➡鉄道会社は株式を発行し資金を集める。
➡毎年、配当金を払う必要があるが、固定資産に投資した年は払うことができない。
➡儲けを平準化するために、新ルール「減価償却」が登場。
他にも、NY証券取引所のディスクロージャー制度の誕生や、デュポン一族のROIの節も非常に面白かったです。気になった方は是非読んでみてください。

筆者は巻末で「本書を読み終えた読者は帳簿、決算書、予算、業績評価などの歴史が意外に短いことに気づいたでしょう。私たちは、歴史を学ぶことによって、あらゆるものごとが『普遍的・絶対的な存在ではないこと』を知ることができます。」と述べています。
生活スタイルの変化やweb3の発展など、経済情勢はおろか通貨そのものの存在すら変化する局面にある現代、あらゆる業界で大きな変換点が訪れていると思います。過去の功績や慣習にとらわれず、本質を見極める姿勢の重要性を再認識しました。
自らの存在意義を問い続けながら、社会に価値を創造できるタスキーでありたいと思いました。

最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。

タスキー株式会社 
大学 佳太朗

参照:会計の世界史

大学佳太朗

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