第338回 動物たちは何をしゃべっているのか/ 山極 寿一 ・鈴木 俊貴

こんにちは!タスキーグループ/経理支援チームの大学です。

 今回ご紹介する本は「動物たちは何をしゃべっているのか?」です。

こちらは、ゴリラ研究者の山極寿一さんと鳥類研究者の鈴木俊貴さんによる、動物たちの音声コミュニケーション、および言語の未来をテーマにした対談をまとめた一冊です。

■前半では、お二人がそれぞれの専門である、シジュウカラ、ゴリラのコミュニケーションについての対話がメインです。動物たちと野生の中で過ごした経験や、実験のお話、さらに最新の知見など、知的好奇心を刺激されるような内容になっています。かなり簡単に要約すると以下のような内容です。

 シジュウカラは見つけた天敵によって鳴き声を変え、さらに天敵の姿をイメージすることができる。さらには、単語のような鳴き声を組み合わせて(語順=文法を使って)情報を共有していることが実験でわかった。

 ゴリラもまた高度な言語能力を持つ。鳴き声とジェスチャーを組み合わせて文脈を読むだけでなく、相手の考えていることを想定することができる。発話は限られているが、手話を教えれば過去の出来事を語るようなことまで表現できる 

 環世界(動物は同じ場所にいても、それぞれの完成にしたがって別々の環境に暮らしているという考え方)の概念が誤解され、動物は人間より劣った世界を生きている(anthropocentrism)という誤解が世に広まったが、そうではなく、動物たちは人間とは違う能力を使ってそれぞれに豊かな環境で暮らしている。

■後半では、ヒトの歴史に立ち返り、そこから現代社会の問題点を提示しています。
 動物のコミュニケーション手段は、それぞれが生息する環境で豊かに安全に暮らすために進化したもの。人類の言葉も同様に、進化の歴史を反映したもので、もともとは多様な環境で小規模な集団が生き延びるために発達したものである。

 そして現代、ヒトは人工的な環境を急速に拡大し、それに合わせた情報通信技術を駆使することによって大きく発展してきた。しかし、ヒトはその歴史に立ち返ると、本来的には視覚優位の生き物であり、事実、私たちの脳はそれに適応できていない。

 音声言語ではその時、その場にいる相手にしかメッセージを伝えられなかったが、文字が生まれたことで時空を超えたコミュニケーションが行えるようになった。その一方で、文脈や感情にかかわる情報、体験的な身体性が間に抜け落ちてしまい、ヒトの思考そのものが文字に集約される傾向が見られるという問題点が指摘されている。

(引用) 

山極 仮想空間やAIには、感情や文脈はありません。巧妙に、あるかのように見せかけてはいるけれど、ない。すごく自然にしゃべっているように見えるAIも、言語と論理によって成り立っている計算機に過ぎない。

 私はそれが怖いんです。

 巧妙に現実世界を模倣しているけれど、実は言語化できない感情や身体性を切り捨てている仮想空間やAIが存在感を増すと、我々人間の脳もそちらに引っ張られて、感情や身体性を捨てることになるんじゃないのかと。

鈴木 たしかに、AIに頼ることで、言語の出現によって生じた問題(※)がさらに加速するようなことがありそうですね。共感のない時代、言語化されたルールだけを重んじて文脈をおろそかにする時代……。

 つい便利なテキストコミュニケーションに頼りがちですが、相手との関係性を構築する上ではテキスト外の情報をやり取りすることも大切なのだと再認識しました。

 ビジネスシーンでは客観的事実=定量的な情報が重要だと思いますが、やはり血の通った人間同士の営みです。その時々に適したツールを活用し、バランスよくコミュニケーションスタイルを選択できると、良いリレーションに繋げることができるのではないでしょうか。

最後までお付き合いいただきありがとうございました!
タスキーグループ/経理支援チーム 大学 佳太朗

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