第328回 「何回説明しても伝わらない」はなぜ起こるのか?認知科学が教えるコミュニケーションの本質と解決策/今井 むつみ

皆さんこんにちは。
タスキー株式会社の大学です。
今回ご紹介する本は今井むつみ著「『何回説明しても伝わらない』はなぜ起こるのか?」です。
本書は、「何回説明しても伝わらない」シーンを切り口に、認知心理学の視点からコニュニケーションの本質とその解決策についてまとめた1冊です。

4章構造で目次は以下のようになっています。
 ➀「話せばわかる」はもしかしたら幻想かもしれない
 ②「話してもわからない」「言っても伝わらない」とき、いったい何が起きているのか?
 ③「言えば→伝わる」「言われれば→理解できる」を実現するには?
 ④「伝わらない」「分かり合えない」を超えるコミュニケーションとは?

本書の主張は「間違っているのは『言い方』ではなく『心の読み方』」です。
人の認知の根本には「スキーマ」の違いがある。と著者は述べます。
スキーマとは、認知心理学の用語で、学びや経験、生育環境、好奇心、感情等によって形成される認知の枠組みのことです。いわば、各人が持つ思い込みの塊とも言い換えられます。
このスキーマは私たちが何かを考える際に脳のバックヤードで常に働くものです。
人は、このスキーマ(≒フィルター)を通じ、情報を自分の都合がいいように、いかようにも誤解する生き物です。では、自分の考えを正しく伝える方法は何なのでしょうか?

第一歩は、「人間が、何をどう聞き逃し、都合よく解釈し、誤解し、忘れるのか」を知ることです。
そして、コミュニケーションに魔法の杖は存在せず、そもそも伝わらないという前提の下で、お互いに少しでも通じる表現を見つける努力を重ねることがずっと大切であると言います。
人間は、考えたことをそっくりそのまま相手にインプットすることはできません。そして、言葉というものも思考を抽象化したしたものにすぎず、伝達ツールとして完璧なものではありません。
相手の立場に立って、というとありきたりな表現ですが、相手の認知の働きに意識を向け表情を読み、認識に齟齬の出そうなポイントを探り、どのような具体を補足をすればよいのか、といったアプローチが必須になります。こうした技術は形だけを真似て習得できるものではありませんので、トレーニングが必要になります。

コミュニケーションに関して、言い方、伝え方にフォーカスした本は多く出版されていますが、スキーマの考え方はそういったハウツーの土台に位置する概念ではないかと思います。本書で認知の基礎を学んだのち、テクニック的な本に触れると、より効果的にスキルセットができるのではないかと感じました。

著者は人間の「バイアス」「メタ認知」といった特徴にも言及し、さいごに以下のようにまとめています。
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この世界で生きていくとは、自分の芯を持ち続けながら、別のスキーマを持った人々の考え方を理解し、折り合いながら暮らしていくこと。
さらに、相手の中にも自分の中にも存在する認知バイアスに注意しながら、物事を一面的でなく、様々な観点から評価し、判断する。
メタ認知をちっかりと働かせることを意識して、自分の所属する集団の価値観を、一歩引いて見つめる。しかし自分の芯はぶれさせない。
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最後までお付き合いいただきありがとうございました。
タスキー株式会社 大学

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