こんにちは。青谷麻容子です。
権力は、抗う者には容赦なく牙を剥く──。
恐ろしいことだが、真実でもあると思う。
本書は、国家権力の弾圧に対し、断固闘いを挑み続け、遂に完全勝利した税理士・飯塚毅氏の物語である。
飯塚毅氏は、大蔵省キャリア官僚の誤りを指摘し、やり込めた経緯があり、そのために私怨を持たれてしまう。その後、中小企業のためにとった税務手法を否定され、脱税指南をしたとして刑事告発されることになる。
飯塚氏は当局を相手に訴訟を起こし、断固戦うが、横暴な大蔵キャリア官僚は、それを許しはしない。メンツのためだけに、飯塚氏の顧客に理不尽な税務調査を行い、遂には彼の事務所には検察の捜査までもが及ぶ。
あらゆる弾劾・圧力を受け、心身ともに疲弊していく中で、なぜここまで戦い続けることができたのか。そこには、禅の厳しい修行に裏付けられた信念があり、彼を信じる家族、師、多くの理解者がいた。
そして、何よりも、職業的会計人としての高い志と強い使命感が、彼を支えたのではないかと想像する。
この「飯塚事件」は、明らかに業界を変えた事件である。
ネゴシエーションが跋扈する業界に絶望した職業的会計人に、希望の光を与え、進むべき方向性を示し、誇り高く生きることを思い起こさせてくれた。
そのバトンを受け取ったこれからの業界を担う、我々職業的会計人は、先人が戦い続け、勝ち取ってくれた今に感謝し、さらなる高みを目指さなければいけないと思う。
サクセスエール税理士法人 公認会計士 青谷麻容子
参照:不撓不屈〈下〉/高杉 良