第199回 ゆっくり、いそげ/影山知明

ゆっくり、いそげ
こんにちは。
タスキー税理士法人の青谷麻容子です。

立夏となり、ここ仙台では爽やかな風の中にも初夏の香りが感じられるようになりました。皆様お住まいの地域はいかがでしょうか。

今回ご紹介する本は、食べログのカフェ部門でも常に上位に入る人気店「クルミドコーヒー」店主の影山知明氏の「ゆっくり、いそげ」です。
著者の影山氏は、東大大学法学部卒業後、マッキンゼー&カンパニーを経て、ベンチャーキャピタルの創業に参画。その後、東京都西国分寺の生家の地に多世代型シェアハウスとカフェをオープンしました。

コンサルタント、ベンチャー投資家というキャリアから大きく方向転換して、見えてきたものは何か。本書は著者がカフェという場を通じて体得した、「特定多数経済」を成立させていく軌跡が書かれています。

影山氏が考えた、新しい経済システムとしての「特定多数経済」という構想とは、どのようなものでしょうか。
グローバル経済が、市場を媒介として「不特定多数」の参加者間での価値の交換を可能とするシステムであるとするならば、それに対して「特定多数」の参加者間での価値の交換を可能にするようなローカルシステムです。

そうすることで、普遍的には必ずしも「価値あるもの」と見なされないようなものでも、「私」と「あなた」という特定的な関係においては価値として認められるということが起こるのではないか。
ただし、内輪な関係だけでは経済・経営は成り立たない。つまり、「特定少数」ではダメで、一つの事業を支えられる位の規模で買い手が存在する「特定多数」が必要となる。

著者はこう続けます。この特定多数間での複雑な価値のキャッチボールを成立させるためには、多くの場合、身体性を伴う直接で密度の濃いコミュニケーションが必須。そう考えると、金銭的な価値に収斂しない価値の保全や育成を実現するためには、カフェを含めた小売業がその鍵を握っている。
カフェとはエンターテインメント業。モノを売る「点」ではなく、空間で時間を過ごしてもらうという「線」や「面」の接点を持つ業種だからこそ届けられる価値がある。と

また、著者は「不等価交換」。つまり、貸し借りが生まれる関係性こそが持続するビジネスにつながる、と考えます。
お金に還元できない価値を多く受け取った人は、「健全な負債感」から返礼の義務を感じ、今度は自分のほうが多く差し出す。カフェでいうと、コーヒー一杯に値段以上の価値を感じたお客様がリピートする。あるいはその店の価値を高めるような行動をとる。ということです。
すると今度は提供したもの以上の対価を得たと感じた店側に「健全な負債感」が生じる。そうやって「不等価交換」が連鎖していくことが「特定多数」の経済を持続的にまわすための仕組みだと述べています。

タスキーグループも、ローカルから新たな価値を生み出すべく、日々奮闘しておりますので、大変勉強になりました。

今度、是非クルミドコーヒーを訪れてみたいと思います。
最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。

タスキー税理士法人 
公認会計士 青谷麻容子

参照:ゆっくり、いそげ/影山知明
青谷 麻容子

青谷 麻容子

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