第216回 お金のむこうに人がいる/田内 学

こんにちは!
タスキー税理士法人の佐藤美友です。

白露を越え、最近までの寝苦しさが嘘のように、朝晩と冷え込むようになりました。
照りつける日差しが少しずつ秋のおだやかなそれに変わり、読書の秋・芸術の秋・食欲の秋、
楽しむにはもってこいですね。
皆さんの「読書の秋」のスパイスになれたらと願いつつ、今回ご紹介させていただきますのはこちら!

『お金のむこうに人がいる -元ゴールドマン・サックス金利トレーダーが書いた予備知識のいらない経済新入門-』 著・田内 学

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ある朝、宅急便が到着したようで、インターフォンが鳴った。
布団から出るのが億劫で、「再配達はタダだし、あとでまた来てもらえばいいや」と居留守を使ってしまった。
わたしの財布からお金は出ていかない。
しかし、財布の外側にいる配達員の労働は浪費されてしまった。
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第1部、「労働が『もったいない』」という一節の冒頭の内容です。
筆者はこの節で、以下のように述べました。

「技術革新などの生産の効率化によって僕たちが受けている恩恵は、材料費や原価が安くなることではなく、『労働が節約できること』だ」

「『労働がもったいない』と思わないと、自分たちを苦しめることになる。僕たちは自分の労働を提供してお金をもらい、そのお金を使って誰かの労働を消費している」

働き方改革が叫ばれる昨今において、労働者である私たちを苦しめているのは、消費者である私たちなのではないか。
モノやサービスが手元に届くまでに消費したものをお金ではなく、消費した誰かの労働として想像してみると、見えてくるものがあります。

この節はもちろんのこと、身近なようで遠くに感じる経済の問題について、本書はとてもわかりやすく書かれていました。
お金への過信を打ち砕く第1部。
お金ではなく「人」を中心に据え、経済をゼロから考え直していく第2部。
社会全体について考える第3部。
最初から最後まで、一貫して難しい言葉は出てきません。

経済だけに限ったことではないですが、現代社会で叫ばれるありとあらゆる問題は、難しい専門用語で語られていることがしばしばです。
途端に興味が薄まり、それ以上思考は深まらず、蚊帳の外にいるような心地を味わったことはないでしょうか。私はたくさんあります。
難しい言葉でごまかすことなく、経済を考えるスタートラインに立たせてくれる、素敵な本だと思いました。

詳しくご紹介したのは第1部でしたが、問題の本質は第3部の中で見えてきます。
「社会全体の問題はお金で解決できない」
第3部のタイトルの意味を、渦中のひとりとして考えなければと思いました。
老若男女問わず、お読みいただきたい一冊です。

最後までお付き合いいただきありがとうございました。


タスキー税理士法人
佐藤 美友

参照:お金のむこうに人がいる/田内 学
佐藤 美友

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