こんにちは!
タスキー税理士法人の佐藤美友です。
一気に冬が駆け寄ってきたかのような大寒波に、身体が驚いてしまっている方も多いのではないでしょうか。
仙台市でも雪がちらつき、道路が氷でキラキラと…
寒さに体がこわばり、両肩がどっと疲れやすくなった気がしています。
年の瀬のお忙しい時節ですから、皆様もどうかご自愛くださいませ。
さて、今回ご紹介いたしますのは、会話に焦点を絞ったこちらの一冊です。
「会話を哲学する コミュニケーションとマニピュレーション」 著・三木 那由他
「会話」とは何でしょうか?
辞書で引けば「複数の人が互いに話すこと。また、その話」などと出てきますが、この説明だけでは物足りなく感じます。
会話の中には、発言を通じて話し手と聞き手のあいだで約束事を構築していく「コミュニケーション」と、発言を通じて話し手が聞き手の心理や行動を操ろうとする営みである「マニピュレーション」があるという前提のもと、様々なフィクションを題材にして会話を分析している本書。
その作品はシェイクスピアや尾田栄一郎、高橋留美子にNintendo Switchのゲームシナリオまで、多岐にわたります。
私にとって印象的だったのは、「第3章 間違っているとわかっていても」のうち、アガサ・クリスティの『オリエント急行の殺人』に触れた一節です。
物語の盛大なネタバレになりますので詳細の説明は省きますが(読まれたことがある方は章題だけでお察しのことと思います…)、間違っているコミュニケーションをその場でやってみせ、そこで形成された「約束事」に従って今後の行動をしていく、というシーンがあります。
その推察が正しくないことには各々が気づいている。ただ、そこではっきりと「嘘をつくことにしよう」と言ってしまったら、嘘をついているのだということが「約束事」になってしまう。
暗黙の了解とも少し違う、皆が「わかっている」からこそ成される会話に、とても人間らしさを感じました。
下記は、本の袖にも書かれている、第1章にある一文です。
「会話のなかでのこうした企みは、何かしら不誠実なものだと思われることも多いように思います。そして、本書でものちに取り上げるように、本当に不誠実な場面もあるのでしょう。
ただ、基本的な姿勢としては、私はこんなふうに互いに工夫を凝らして会話のなかで試行錯誤する人々の姿を愛おしく思っていて、そうした人々が織りなす会話という営みそのものが、その企みゆえに多様な面を持った魅力的な現象であるとも思っています。」
そもそも、この本を手に取ったきっかけは、常々感じている「伝わらない」というモヤモヤを少しでも解消できればと思ったからです。
「約束事」がかみ合っていないのか、はたまた企みを読み取れないのか。
読み終えた今、恐らく両者だとは思うのですが、なにが正解というわけでもないのかなぁ、という感想を抱いています。
試行錯誤を繰り返し、伝え方を模索する。
きっと一生かけて、経験を積み上げていくのだろうと思います。
変に期待したり諦めたりせず、その過程を楽しんでいけたら、会話がより魅力的になると信じて。
最後までお付き合いいただきありがとうございました!
タスキー税理士法人
佐藤 美友