はじめまして。タスキー株式会社の髙本と申します。今回の今読みたい本の紹介を担当させていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。
今回ご紹介する本は、相良 奈美香著「行動経済学が最強の学問である」です。
最強の学問というワードで興味を持ったのですが、読み進めると想像以上に「行動経済学」が身近にあるということがわかりました。行動経済学は「経済学」と「心理学」が融合した学問で、「人間は合理的である」という伝統的な経済学の限界から誕生したものです。つまり人は「非合理な意思決定」を様々な要因で行うことが往々にしてあるということを解明したものが行動経済学なのです。
「非合理な意思決定」をする消費者の行動を知りたい企業の方に役立つ分野なのですが、「非合理な意思決定」をしてしまっている自身の行動も振り返ることができ、ビジネスの場だけではなく日常でも幅広く考えされられる内容です。
「非合理な意思決定に与える要素」は次の3つに分類されています。
① 認知のクセ
② 状況
③ 感情
①は脳がインプットされた情報をどう処理するのか、その時にどんな「クセ」があって「非合理な判断」をしてしまうかということを、「認知のクセ」として紹介しています。
その1つとして「システム1vsシステム2」があります。システム1は「直観的で瞬間的な判断」でシステム2は「注意深く考えたり分析したりと時間をかける判断」のことです。それを人は場面場面で使い分けています。
朝食で何を食べるかなど全てをシステム2で考えていると脳がパンク状態になってしまいますが、システム1で瞬時に判断することにより、それが思い込みや偏見となり、結果間違った判断になることがあります。仕事に慣れてきたころにミスをするのは、「こんな程度かな」としっかり検討せずシステム1しか使っていないことが原因です。
システム1を使いがちになるときは、研究により以下の6つにまとめられています。
・疲れているとき
・情報量・選択肢が多いとき
・ 時間がないとき
・ モチベーションが低いとき
・ 情報が簡単で見慣れすぎているとき
・ 気力・意思の力がないとき
個人的にとても心当たりがあり、上記のようなときはうっかりミスが立て続けに起こったりします。
②は日常的に無数に行っている「自分で主体的に行っている」意思決定が実は「状況」に「意思決定させられている」ということです。天気の良し悪しや周りに人がいるか否か、物や人の位置や順番など、まさか関係ないだろうと思っていることが、我々の判断に大きな影響を与えています。
例えば、競争率の高い求人に対し10人の学生が面接を受ける場合、「一番最初の人」と「一番最後の人」が合格する可能性が高いことがわかっています。「系列位置効果(情報の順番によって記憶の定着度に差が出る)」の、「初頭効果(初めに得た情報が印象に残り強い影響を与える)」、「新近効果(最後の情報が意思決定に大きな影響を与える)」によって、最初と最後が頭に残りやすいというものです。
他の例の中で印象的だったのは、店内に流れている音楽でフランスワインとドイツワインの売れ行きが異なったというものです。フランス風のBGMを流している週はフランス産のワインが、ドイツ風のBGMを流している週はドイツワインの方がよく売れたという実験がありました。店内のBGMだけではっきりと数字に表れるほど売れ行きに違いが出ていて、売る側としては敢えて文字を使わなくても、BGMで聴覚にさりげなく訴えることで売りたいものに誘導することができることになります。
③は意思決定が「感情」によって左右されていることです。「喜怒哀楽」といった強い感情(エモーション)だけでなく、頻繁に抱いている「淡い感情(アフェクト)」もおおいに人の判断に影響しています。
ポジティブな感情は仕事の効率や質を高め、心身のストレスを軽減させます。ストレスの多い会議の後においしいコーヒーを飲んでホッとするなど、「淡い感情」なのですぐ消えますが逆にすぐに生み出すこともできます。
また誰でも気乗りしない仕事や運動にすぐに取り組めないといった経験はあるのではないでしょうか。こちらはネガティブ・アフェクト(脳の中の小さな不安や不満)です。「とりあえず5分だけやってみよう」とか「小さなゴール」から徐々にゴールを大きくするといった手段が効果的だと紹介されています。放っておくと大きくなってしまうので、注意を払うクセをつけて、きちんと向き合い自分に合った上手い付き合い方を考えておくとよいですね。
こちらで上げたのはほんの一部ですが、日常的に自分で行っている非合理な意思決定について、他にも考えさせられることがありました。これを前提として頭の片隅に置いておくと、システム2を作動させて自制できるかもしれないし、小さなミスを防ぐことにつながることにもなると思います。ムラがある気分とも少しはうまく付き合えるかもしれません。
最後までお付き合いいただきありがとうございました!
今後ともどうぞよろしくお願いします。
タスキー株式会社
髙本 かおり