こんにちは!タスキーグループ/税務支援チームの上野です。
今回ご紹介する本は、前野ウルド浩太郎著『バッタを倒しにアフリカへ』です。本書は、昆虫学者である著者がサバクトビバッタの研究のためにアフリカ・モーリタニアへ渡り、研究活動を行った体験を綴ったノンフィクションです。資金不足や文化の違いなど多くの困難に直面しながらも、バッタの大量発生(蝗害)が引き起こす農業被害の解明と対策を目的に現地で研究に取り組みます。
本書の魅力は、バッタやアフリカといった多くの人にとってなじみの薄いテーマを、ユーモアを交えながら読みやすく描いている点です。知識がなくても楽しめる構成になっており、また、昆虫が苦手な人に配慮し、虫の写真を一切掲載していないところも特徴的です。
本書を読み始めると、まず著者のバッタへの愛情に圧倒されます。小学生のときに読んだ「観光中の外国人女性がバッタの大群に襲われた」というエピソードに対して、「バッタに恐怖を覚えると同時に、その女性を羨ましく思った」と感じたことや、子供のころの夢が「バッタに食べられたい」だったという話は、筆者が普通の昆虫好きを超えてバッタに魅せられてることを感じさせます。こうした原体験が著者が昆虫学者を志すきっかけとなりました。
バッタの被害は日本では馴染みがありませんが、地球全体では陸地面積の20%がその影響を受けています。特に西アフリカでは、蝗害による被害額が年間400億円にも及び、貧困を悪化させる要因となっています。しかし、バッタの研究は過去の事例が少なく、研究者にとっては実績を作りやすい分野であるとも言えます。
日本で博士号を取得したものの、国内での研究継続が難しいと感じた著者は、単身アフリカへ渡り、フィールドワークを行うことを決意します。しかし、新天地での研究は、異文化や価値観の違いによって様々な困難が伴いました。例えば、「アフリカンタイム」と呼ばれる時間感覚の違いに直面し、集合時間はあくまで目安であり、待ち合わせに数時間遅れるのが日常茶飯事。また、ドライバーとの賃金交渉では、「他の外国人はもっと払ってくれた」と言われ、それを信じて支払ったものの、後になってそれが嘘だったことが判明するなど、文化の違いに振り回されます。
このように、研究だけでなく、異文化での生活が取り上げられていることも本書の見どころになっています。バッタ研究という一見マイナーなテーマですが、著者の情熱や異国の地での奮闘の様子など魅力が詰まった本となっています。興味を持たれた方は、ぜひ手に取ってみてください。
最後までお付き合いいただきありがとうございました!
タスキーグループ/税務支援チーム 上野鎮