こんにちは!タスキー株式会社の上野です。
本日ご紹介する本は、「風の帰る場所 ナウシカから千尋までの軌跡」(宮崎駿著)です。
本書の著者は、皆さんご存じのとおり、数多くのジブリ映画で監督を務められた宮崎駿さんです。この本を手に取ったきっかけは、宮崎駿さんのドキュメンタリーを見たことでした。ドキュメンタリーでは、宮崎さんがえんぴつ片手に机に向かって絵を描き進める様子が紹介されていたのですが、その中で宮崎さんは「面倒くせえ、面倒くせえ」と言いいながら作品作りを進めていたのです。その様子が印象的で、宮崎さんどんな人なのか興味を持ち、この本を手に取りました。
本書は『風の谷のナウシカ』から『千と千尋の神隠し』までの約12年間のインタビューをまとめたものです。インタビュー形式なので、整理された文章ではありませんが、宮崎さんのありのままの言葉が掲載されているので本人の価値観がより鮮明に感じられます。
例えば作品作りについて宮崎さんは、
「人間たちはいい人ばかりでなくて、愚かな部分もあるし、狂暴な部分もあるっていうふうにしないと、それは人間を描いたことにならないですから。」
と話す一方で、
「自分が善良な人間だから善良な映画を作るんじゃないですよね。自分がくだらない人間だと思ってるから、善良な人が出てくる映画を作りたいと思うんです。」
とも語っています。
ありのままの人間を描きたいという気持ちと、理想的な人間を描きたいという気持ちが同居していることは、一見矛盾しているように感じました。ただ、この二面性こそが、ドキュメンタリーで宮崎さんが発していた「面倒くせえ」という言葉に表れているのではないかと思います。
物語をわかりやすく描くことは簡単です。例えば東京を舞台にして、ありふれた人に突然チャンスが訪れて自分の力を発揮するような作品がそうです。しかし、宮崎さんはそんな短絡的な映画を作りたくない。一方で、夢も希望もない作品も作りたくない。その理想と現実のはざまで、どう表現すべきかと向き合っているときの葛藤が「面倒くせえ」なのだと思いますし、その結果が公開から時間がたっても飽きられない作品に繋がっていると感じました。
本書を読んで改めてジブリ作品を見返したくなりました。最後までご覧いただきありがとうございました!
タスキー株式会社
上野鎮