こんにちは!タスキーグループ、インターン生の泉水美紅です。
今回ご紹介するのは、近藤史恵さんの小説『タルト・タタンの夢』です。
この作品は、下町の小さなフレンチレストラン「ビストロ・パ・マル」を舞台にした、連作短編の日常系ミステリー。無口で洞察力のあるシェフ・三舟を中心に、店を訪れるお客さんの「小さな謎」や「心のひだ」が料理を通して解き明かされていく物語です。
美味しそうな料理の描写と、人の温かさに満ちたストーリーが魅力で、私自身も読後に優しい余韻が残りました。今回はその中でも特に印象に残った2つの気づきをご紹介します。
① 観察することの大事さ
三舟シェフは、決して多くを語りません。ですが、客の表情の変化や声のトーン、食べるスピードなど、ささいな変化を見逃しません。
たとえば「なぜあの人は、あんなに焦って料理を食べたのか?」
→その小さな違和感から、やがて人の心の奥に隠された事情が浮かび上がっていきます。
この「観察する力」は、私たちの日常や仕事にも通じると感じました。相手の言葉だけでなく、その背景にある気持ちを丁寧に見ることで、よりよい関係や提案が生まれますよね。
まるで料理の味を確かめるように、相手をよく味わうことが大切なのだと、静かに教えてくれる物語でした。
② おいしいは、心の状態で決まる
作中で印象的だったのが、「同じ料理でも、作る人・食べる人の心が違えば味も変わる」という考え方です。
ある話では、恋人がわざとまずい料理を作る場面があります。その理由をたどっていくと、「料理」は単なる食事ではなく、想いや関係性を映す鏡であることに気づかされます。
私たちの仕事でも、資料やサービス、言葉ひとつにも心が宿るものです。どんなに完璧なレシピがあっても、そこに思いや誠実さがなければ、人の心には届かない…「おいしい!」を生むのは、技術だけではなく人のあたたかさなのだと思いました!
読後には、フレンチの香りよりもむしろ、人と人との関係のやさしさが心に残りました。
華やかな事件や派手な謎はありませんが、逆にそこが、親近感が湧き日常を丁寧に生きることの尊さに気づかされます。
秋の夜長に、温かい紅茶を片手に読むのにぴったりの一冊です。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
タスキーグループ/制作チーム 広報インターン
泉水美紅




