こんにちは。
タスキー税理士法人の青谷麻容子です。
秋が深まり、日毎に朝晩は冷え込んでまいりました。ここ仙台でも、木々が美しく紅葉する季節を迎えております。皆様のお住まいの地域は今どのような風景でしょうか。
今回ご紹介する本は、作家で元東京都知事の石原慎太郎さん、戦後最大のスター石原裕次郎さん兄弟を育てた母、石原光子さんの『我が息子、慎太郎と裕次郎 その日々』です。
光子さんは1992年に82歳でお亡くなりになっていますが、本書は、石原兄弟の「子育て」について、光子さんが77歳の時に出版した『おばあちゃんの教育論』を、石原慎太郎さんの御逝去に伴なって改題、復刊したものです。
どのようにして、日本一有名な兄弟と言っても過言ではない石原兄弟は育てられてきたのでしょうか。本書を読むと、母、光子さんと父、潔さんが注いだ息子への愛情と信念、その情景が目に浮かんできます。
子煩悩だった父、潔さんは働き盛りに脳溢血で急死し、光子さんは41歳で後家さんになりました。多感な時期の石原兄弟は強いショックを受け、父親の死の悲しみから裕次郎さんは荒れ、一家の大黒柱を失った石原家は金銭的にも厳しく、大変な状況だったようです。
そんな中でも、光子さんは、子供たちの心にぽっかり空いた穴を埋めるように、厳しくも温かい愛情と信念をもって、2人の子育てに奮闘している様子が描かれています。
例えば、
- 幼い子には、体で覚えさせるのがいちばん。
- 「ここぞ」というときには、手加減せずに叱りなさい
- くどくど叱るのは、𠮟り下手。
- 他人の子供でも、悪いことをしたら叱るのが当たりまえ
- 朝に身支度を手伝うより、遅刻する恥ずかしさを覚えさせなさい
- 子供が服を破るのを叱るのは、愚かな母親
- 愛情がなければ、厳しく叱れません
- 長男らしさ、次男らしさより、その子らしさ
- 子供に勉強させるには、親も頭をつかうこと
- 「親のため」を「子どものため」と勘違いしていませんか
- ときには、先生にも断固として立ち向かう勇気を
- 子どもに夫の悪口を言っても、子どもが何をしてくれますか
- 自分に厳しくない母親は、子どもからバカにされるだけ
など、沢山の光子さん語録があります。
若い方がこの表題だけ見ると、古いとか時代錯誤のように感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、その理由を本書で読むと、なるほど、たしかに大事なことだと思えます。
早くに父を亡くした兄弟を女手一つで厳しくも愛情豊かに育てた情景を描いた本書は、子育てという枠にとどまらず、一人の人間を育てるという過程で遭遇する様々な場面にも通ずる普遍性があり、心に響きます。上司が部下を育てる、先生が学生を育てる時にも参考になると思いました。
最近は上司が部下を叱るという場面は少なくなってきているとは思いますが、本当に相手のことを思うなら、たとえイヤな思いをしても言わなくてはならないことはきちんというべきだと思います。そこに愛情があるなら、それは相手に伝わるし、愛情がなければ、嫌みや皮肉にしかなりません。
家族も会社も、子供や社員の良い部分をみつけ、それを伸ばす。時には叱り、時には何も言わず見守る。その根底には愛情と信頼が必要だと感じました。
前書きには、「ふたりの息子は、それぞれ世間にすこしは名を知られるようになりましたが、私にとってはそんなことはどうでもいいことです。ふたりがどんな人生を歩もうと、社会のために少しでも役に立とうと努力し、いっぽうで親を大事にする人間に育ってくれたこと、これだけで私は十分に満足です。」と書かれています。
この親にして、この子あり。
最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。
タスキー税理士法人 公認会計士 青谷麻容子