こんにちは!
タスキー税理士法人で学生インターンをしております、髙橋です。
本日ご紹介するのは、「会社という迷宮-経営者の眠れぬ夜のために」。
経営コンサルタントとして多くの経営者と対話してきた著者が、会社や経営者にまつわる問いと洞察を1つ1つ述べています。
取り上げられるテーマは、「戦略」「価値」「人材」など、誰もが知っている14のキーワード。
しかし、本来はどのような理解であるべきか、そして、常識となった誤解はどのようなものか、「迷宮の経営辞典」という形式で、深く考察されています。
著者が警鐘を鳴らすのは、
本来会社とは、極めて人間的なものであったはずである。
しかし、現代の会社を見渡すと、すっかり人間臭さ(主観性)が失われ、見た目の業績や成長を追うだけの装置となってしまっている。
という点です。
本来は軍事のため用いられていた「戦略」という概念。
この考え方がビジネスの世界に持ち込まれ、会社も、「勝つか、負けるか」という世界になりました。
どうすれば競争相手を打ち負かせるのか。
そのために何を捨て、何を獲得しなければならないのか。
ステークホルダーの要求に答えるため、整備しなくてはならないことはなにか・・・。
会社はゲームに勝つための方法ばかり考えるようになり、なぜこのゲームを始めたか、どこに向かって進むのか、そもそもの問いを見失ってしまいます。
夢と志を持った人間の営為によって生まれた会社が、今ではただの競争ゲームの参加者へとなってしまっている、と著者は説くのです。
そこで、著者のメッセージの核心は、失ってしまいがちな本来の経営を、取り戻すことです。
著者はこう述べます。
『何が価値であるのかを決めるのが経営者の仕事なのであって、他人に決められた価値を追及するのが仕事ではない』
『経営者にとって本当に恥ずべきことは、社内外に対して、信念をもってさらけ出せる自身の「主観」、ステークホルダーを糾合することができる「主観」を持ち合わせていないことである』
なんのために、どこに向かって会社を経営するか。
自身の主観的な思いを前面に出した経営ができたら、どれだけ素晴らしいだろうと素直に思いました。
けれども、現実はなかなかそうもいかないというのも事実だと思います。
著者が属するコンサルティング会社のOBである永岡氏が、創業経営者の立場から本書の末尾に書評として、正面から批判を投げかけています。
『実は経営者すらも幾多ある役割分担の一つに過ぎない、というのが組織の中で働く者の実感である』
『経営者からすると「やりたいこと」を起点に躍動的な事業を生み出せ!という提言は本音では戸惑うばかりである。現実には「機会を探し、強みを分析し、コストを抑え、ビジネスモデルを研ぎ澄ませ」ということしかやることが無くなるのである』
10ページくらいに及びますが、厳しめのコメントです。笑
そもそもこのような批判を巻末に乗せていることが意外で読んだときに驚きましたが、さらに理解が深まりました。
まさに、会社経営の答えの無い迷宮な部分が、1冊の本の中で議論されています。
私にとっては少し、難易度の高い本だったな、と感じます。
何度も読んで理解を深めたい議論が多々あり、経営者ではなくても、リーダーを経験したことのある人なら自分に当てはめて深く考えることのできる1冊です。
著者は、あらゆる組織の経営に悩む全ての人にとって、応援歌でありたいと語っています。
是非、お手にとってみてはいかがでしょうか。
タスキー税理士法人 髙橋俊英