「先代が求める役割」と「自分がやりたい仕事」のギャップ

「先代が求める役割」と「自分がやりたい仕事」のギャップ

私は5年前にアウトソーシング会社を第三者承継しました。アウトソーシング会社の前社長、つまり先代は、経営判断に役立つ試算表を作ることを基本姿勢にしており、一目見るだけで、どこに経営上の課題があるのかわかるくらい、試算表を細かく丁寧に作成していました。しかし、私は税理士でしたので、領収書を見て、丁寧に試算表を作成し、それを納品するだけというアウトソーシング会社の仕事には満足できませんでした。試算表を作るだけでは、クライアントに貢献できない。私は、クライアントの経営数値やビジネスモデルを分析したり、業績管理をしたりすることで、業績を伸ばせば、もっとクライアントに貢献できると考えていました。

事業承継

今でこそ、先代の価値観や背景を理解していますが、当時の私には理解ができず、「自分のやりたかった仕事はこれだったんだろうか」、「他の人が会社を継いだ方が良かったんじゃないか」と仕事に打ち込めない日々を過ごしていました。幸い私は親子間承継ではなかったので、親子間でありがちな、感情を直接ぶつけ合うようなコミュニケーションをしたことはなく、決定的な確執には至りませんでしたが、自己肯定感の欠如には本当に悩まされました。私と同じように、「先代が求める役割」と「自分がやりたい仕事」のギャップに悩んでいる後継者は多いのではないでしょうか。

事業承継

先代と自分の違いを理解する

事業承継は、「守りながら変容する」ことが鉄則です。後継者育成セミナーなどでは、よく「先代が正しいのだから、四の五の言わず後継者が先代の考えを受け入れること」と教えます。しかし、これでは、先代か後継者のどちらかが正しいという、オール・オア・ナッシングの発想になってしまいます。つまり、後継者が100%正しいとした場合、先代を全否定することになり、「守る」ことができません。逆に、先代が100%正しいと受け入れた場合、後継者自身を全否定することになり、「変容する」ことができません。このように、オール・オア・ナッシングの発想による事業承継は、最終的に不幸な結果をもたらします。

では、どうすればよいのか。事業承継で最も大事なことは、先代と後継者の違いを理解することです。まずは、後継者が先代から自立するのです。とかく先代は、後継者にとって大きな存在なので、後継者はどうしても先代に依存しがちです。しかし、スティーブン・R・コーヴィーの『7つの習慣』にもあるように、まずは後継者が先代に「依存」している状態から、自分で考え、行動する「自立」の状態になることを目指すのです。そうすれば、自分を否定せずに先代を受け入れることができ、感謝しながら仕事に打ち込むことができます。感謝よりも自立が先なのです。私の場合、幸い、先代が私と距離を置いてくれたことで、自分と先代との違いについて深く考える機会をくださり、それが私の自立のきっかけとなりました。

変化のスピードの速い現代では、ただ守るだけでは生き延びることはできません。先代から受け継いだ理念やビジネスモデル、組織などを「変容」させ、顧客に大きな価値を提供し続けなければ、生き残ることはできないのです。

事業承継

事業承継の5つのステップ

守りながら変容するには、具体的にどのようにすべきなのか。私は、事業承継には、次の5つのステップが必要だと考えています。

先代の思いを受け継ぎながら、理念やビジョン、組織を再構築し、顧客に対して大きな価値を提供し続けることは、経験の浅い後継者にはなかなか難しいことです。しかし、自分の頭で考えながら、一歩一歩これらのステップを進んでいけば、不可能なことではありません。まずは自分が変わること。自分が変われば自然と周囲にも影響が表れ、事業承継のための土壌が築かれていくことでしょう。

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税理士 平間公樹

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