こんにちは!タスキーグループ人事支援チームの佐藤みちるです。
今回私が紹介する『イン・ザ・メガチャーチ』は、『桐島、部活やめるってよ』でデビューした朝井リョウさんの作品で、”推し活”等のファンダム経済(特定のアイドルやキャラクター、スポーツチームなどに熱狂するファンの感情や行動によって成り立つ経済圏)をテーマに、仕掛ける側、のめり込む側、そしてかつてのめり込んでいた側という異なる立場の3人の視点から、「今の時代、人を動かすものは何か」に迫っていくお話です。
特に印象に残ったのは、「視野を狭めること」が単なる危うさだけではなく、“動くための方法”として描かれていたことです。
作中には、国際問題や環境問題にも関心を持ち、社会にとって正しいことを真剣に考えてきた女子大生が登場します。しかし、世界を知れば知るほど、あらゆる可能性や正しさを考え続けるほどに、何が正しいのか分からなくなり、身動きが取れなくなっていきます。
(引用)視野を拡げれば拡げるほど、この世界が平和や平等からはほど遠くて、理想を叶えるための道のりがあまりに長すぎて、現在も未来も絶望に満ちているような気持ちになってしまう。様々な世界を知るほど、何をしても誰かにとっては本質的な行為ではないこと、誰にとっても正しいことなんてこの世に存在しないことも同時に知ってしまって、身動きが取れなくなってしまう。(/引用)
彼女が、マーケター側に仕掛けられた“物語”に没入し、推し活をきっかけに生き生きとしていく姿が描かれており、「視野をあえて狭めることで、ようやく前に進める人もいる」という描き方がとても新鮮でした。これまで私は、「視野を広く持つこと」が大切だと思って生きてきましたが、そのことを意識しすぎるあまりかえって動けなくなってしまうこともあるなとハッとしました。広い視野を持ちながらも、ときには自分が進むために必要なものへ集中する、そのバランス感覚を持ちたいなと感じました。
また、本書では「我を忘れて何かに夢中になっているほうが、楽」という言葉も印象に残りました。仕事、恋愛、SNS、推し活等々……対象は違っても、「一生懸命何かをしていること」自体が心の支えになっている面は確かにあると思います。私自身、気づくと仕事や趣味にのめり込みすぎてしまうことがありますが、その構造は推し活ともどこか似ているのかもしれません。
今を生きている感覚をそのまま切り取られたような没入感で読み進める手が止まらず、読後は自分自身への問いが残ります。推し活の話でありながら、仕事やSNS、人間関係など、現代を生きる多くの人に重なるテーマが描かれている作品だと感じました。
2026年本屋大賞も受賞した話題作、ぜひお手に取ってみてください。
最後までお付き合いいただきありがとうございました!
タスキーグループ人事支援チーム 佐藤みちる




