第250回 ナガオカケンメイとニッポン/ナガオカケンメイ

こんにちは!タスキーグループ人事支援チームの佐藤みちるです。


『ナガオカケンメイとニッポン』は、流行に左右されず、人々の暮らしの中で長く愛され続けるもの・ことに価値を見いだす『ロングライフデザイン』を提唱し、実践してきたデザイナー・ナガオカケンメイさんのブログをまとめた一冊です。発行は2009年ですが、「地方を活性化しよう」といった大きな理想を語るのではなく、各地で出会った器や家具、工芸、食文化、人々の暮らしを丁寧に観察し、その背景にある価値を掘り起こしていく視点は、今読んでも古さを感じさせません。

なかでも印象に残ったエピソードは、「日本の伝統工芸品の価値は、究極、その土地で買うことにあるのではないか」という話です。
その土地でしか買えなかったものが、全国どこでも手に入る。それは便利で嬉しい一方、本来は土地を訪れ、背景に触れ、数あるものの中から選ぶ時間まで含まれていた購入体験が、ただ商品を手に入れるだけの行為へと簡略化されてしまっているのではないかと。たしかに、ものは手元に残っても、そこに至るまでの物語や記憶が抜け落ち、体験の奥行きが失われるような寂しさがあります。

私は以前から曲げわっぱが欲しいなと思っていましたが、いつの間にか似た商品が多くの店に並び、最近では木目を再現したプラスチック製の曲げわっぱ風お弁当箱も見かけるようになりました。手入れは簡単で、安くて、どこでも手に入る。しかし、天然秋田杉の手触り、職人の技術、その土地で育まれてきた背景が切り離され、見た目だけが残っていることに、すこし歪さを感じた時がありました。
ただ、著者の考えに共感しながらも、リプロダクト品を検討することも多いのが本音…笑。「私にとっての基準」はなんだろう?と考えたとき、価格の安さ、あるいは本物かどうかだけではなく、目の前のものを見て、違和感なく、素直に「良い」と思えるかどうかだと気づきました。ものを選ぶことは、正しい答えを探すことではなく、自分が何に価値を感じるのかを確かめることだと。

ものを選ぶという点でもう一つ印象に残ったのが、「これからの私たちには”安売りにどう勝つか”というテーマがある」という話です。
「日本中が”安い”方向へ向かうなかで、”適正”をどう伝えるのか。」という問いに対し、最終的には「品格」に至ると著者はいいます。品格はすぐに作られるものではなく、言葉遣いや振る舞い、一つひとつの仕事への向き合い方など、瞬間瞬間の微細な積み重ねによって形づくられていくものです。

最近、私たちが提供しているサービスはどのような立ち位置にあり、どのような特徴や価値を持っているのかを改めて考える機会が増えました。私たちのサービスも、決して安さを売りにしているものではなく、より良いものを届けたい、目の前の課題を本質的に改善したいという思いから生まれています。そう考えると、お客様との一つひとつのやり取りや、日々の業務の進め方も、サービスの価値をつくる大切な一部です。価格だけでは伝わらない「適正さ」を示すために、改めて日々の仕事にしっかりと向き合おうと背筋が伸びる思いがしました。

この本は、伝統工芸や地域文化について考えるだけでなく、自分が何を選び、どのように仕事をしていくのかを問い直すきっかけを与えてくれました。デザインを軸に、生活を考えるヒントがたくさんあるおすすめの一冊です。

最後までお付き合いいただきありがとうございました!
タスキーグループ人事支援チーム 佐藤みちる

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